2021年8月24日火曜日

ペーパーバックの「やさいのおなか」


 

「やさいのおなか」は1984年10月に福音館書店よりペーパーバックシリーズの1冊として誕生しました。当時はペーパーバックシリーズ(サイズ 15X15cm )が色々と出ていました。薮内正幸さんの動物シリーズ「どうやってねるのかな」や「なにのこどもかな」などもそうです。現在はハードカバーの書籍として販売されています。

1970年に出版された「ことばのべんきょう」シリーズ かこさとし文・絵などは現在でもペーパーバックとして販売されています。

https://www.fukuinkan.co.jp/search.php?series_id=79&page=1


ペーパーバックの「やさいのおなか」は1990年11月の重版が最後になりました。その後販売が終了して1997年1月にハードカバーの書籍として復活しました。


写真右側の絵本がペーパーバックの「やさいのおなか」です。

どちらも裏表紙ですが、違いがわかりますか?

ペーパーバックからハードカバーの書籍になるときに色々と変更されたことがありました。ペーパーバックと書籍では絵本のフォーム(様式)が違うので、物理的に変更した点もありますが、新たな考えが生まれて自ら変更を希望したものもあります。何がどう変わったかは、絵本を見比べないとわかりません。ペーパーバック版の販売はすでに終了しているので、中古品を探すしかないです。もしかすると図書館で見つけられるかも知れません?


たくさんの絵本が毎年消えている中で、「やさいのおなか」は今も多くの読者に愛されて読み継がれている絵本になっています。ただただ感謝です!この絵本が生まれた時の気持ちを忘れずに、絵本を作り続けたいと思います。


読者からの問い合わせ

 やさいのおなか」について

きうちかつさま


突然のメールお許しください。

児童図書館研究会運営委員の汐﨑順子(しおざきじゅんこ)

と申します(元図書館員,現在は大学の非常勤講師)。


『やさいのおなか』について前から気になっていることがあり調べたところ,ブログなどがあることを知り,こちらのメルアドにたどり着きました。


この絵本は私が図書館員だったときにおはなし会などでも子どもと沢山よみきかせをしました。私にとってもお気に入りの1冊です。


もちろんペーパーバック版の時からの読者ですが,これがハードカバーになった時に内容が変化したこと,特に「オクラ」がなくなったことを覚えています。


その理由として私は現在出回っているオクラの多くが「五角オクラ」で断面が五角形をしているけれど,絵本のオクラは六角形であり(もちろんそういう品種もある),

それに配慮してということだったようにおぼろげながら記憶しています。これは私の勝手な思い込みかもしれませんが,もし差し支えなければ改訂の経緯について教えていただくことは可能でしょうか?


実は児童図書館研究会の機関誌『こどもの図書館』にこの4月から「子どもの本~重箱のすみっこつつき」という連載をしていまして,長年読み継がれてきた子どもの本にあるエピソード,たとえば社会の変化や時代の流れの中での変化などをつづっています。


知識絵本,科学絵本の表現の変化について調べているところなのですが,(『せいめいのれきし』の改訂などもこれに含まれるかなと)大好きだった『やさいのおなか』の「オクラ」についての疑問をここでもう一度確認したいと思いました。


不躾なメールをお送りし,本当に申し訳ありませんが,ご教示いただければ幸いです。お返事をお待ちしております。どうぞよろしくお願いいたします。


汐﨑順子


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汐﨑順子 様


初めまして、木内です。

ご連絡ありがとうございます。

お問い合わせについてお答えします。


最初のペーパーバックの「やさいのおなか」をご存知でしたか、ありがとうございます。この絵本はぼくのデビュー作で、40年以上前にぼくが20代前半で描いた最初の絵本です。ブログや仮説社の雑誌では「やさいのおなか」が生まれたきっかけについて紹介しましたが、ペーパーバックからハードカバーになった経緯については、まだ話とことはありません。講演会等でも質問されたことはありますが、オクラだからお蔵入りになったとはぐらかして答えは教えていません。


「やさいのおなか」は色々な秘密があります。

例えば枠の色がヒントになっていたりして、読者が自分で気付くと嬉しい仕掛けになっています。他にもありますし、「やさいのせなか」や「くだものなんだ」との違いもあります。絵本は絵を読む力が大切です。幼児は文字は読めませんが、絵を読む力はあります。人に教えてもらうのではなくて、自分で気付き発見することが大切だと思っています。いろいろなメッセージをこめて表現できるのが絵本の魅力です。


「絵本を1冊作るのにどれくらいの時間がかかっていると思いますか?」と、言う質問を読者にすると、数ヶ月という答えが一番多いです。ぼくの場合は最低でも2年以上かかるという話をすると、読者はびっくりされます。そこで絵本ができるまでの過程を話すと、皆さん納得されます。ブログではかがともの絵本ができるまでの過程をいくつか紹介しています。著者としては完成された絵本を見ていただき、読者は自由に想像を膨らませて欲しいと思っています。


なぜそのタイトルがついたか、なぜその表紙になったか、なぜそういう結末になったか?絵本には読者が知らないことがたくさんあります。物理的な理由もあれば、出版社や編集者との関係など結構複雑な理由もあります。おおやけにできないこともありますが、今回の質問についてはいつかブログ等で紹介したいと思います。それまで自由に想像してください。それも絵本を楽しむ魅力の一つだと思います。


月間絵本には単行本とは違い著者の考えや想いについて書かれた小雑誌が付いています。かがともだと「作者のことば」になります。これは絵本ができてから最後に書くのですが、ぼくの場合は絵本を作り始める最初に書いています。最初にテーマや何を伝えたいのかをわかりやすくするためです。もちろん作りながら気持ちも変化するので、何度も書き直すことになりますが、ぼくにとっては大切にしている作業の一つです。この文章を読み解くことが絵本を知る大きなヒントになります。


これからもたくさんの子どもたちと絵本を楽しんでください。

ぼくもまだまだ新しい絵本を創造したいと思います。

よろしくお願いします。


きうちかつ