2018年10月6日土曜日

絵本あそびワークショップの報告

9月24日((月)かごしまメルヘン館で絵本遊びワークショップが開催されました。参加者は親子(保護者と子ども)30組で、絵本「はじめてのおつかい」筒井頼子・作 林明子・絵 福音館書店刊 を読んでから「お買い物ごっこ」をして遊びました。初めての場所で初めてお会いする参加者とワークショップをする場合は、このプログラムをよく選びます。

*「お買い物ごっこ」の遊び方は「木内かつの絵本あそび」福音館書店刊をご覧ください。



みんなが一緒に遊べる「お買い物ごっこ」

 なぜ「お買い物ごっこ」遊びがよいのか?一番の理由は、お互い知らない家族同士でもみんな一緒に遊べるからです。初めての場所で初めて出会った子どもたちは、みんな緊張しているので親(保護者)の側から離れようとはしません。親(保護者)も自分の子どもが気になります。その緊張している空気をあっという間にほぐして一緒に遊べるのが「お買い物ごっこ」です。
 絵本を読み始める前に子どもたちは親から離れて絵本が良く見えるように前に移動してもらいます。それから絵本を読みます。絵本を読んでから子どもたちに聞きます。「一人でお買い物をしたことある人?」「一人でもお買い物ができる人?」元気よく手をあげる子どももいれば、親(保護者)の顔を探して様子を伺う子もいます。「これからお買い物ごっこをします。本当に一人でお買い物ができるかな?」こうしてお買い物ごっこが始まります。

最初に自分の買い物かごを作る

 子どもたちは親のいるところに戻ります。そして子どもも親(保護者)も自分専用の買い物かごをそれぞれ作ります。

お店の準備と買い物に出かける準備

 お店の準備は親(保護者)にしてもらいます。お店に並ぶ商品はチラシを使います。スーパーマーケットや住宅や車など様々なチラシから商品の写真を切り取ります。それらを床に並べて売りす。(写真1参照) 
 親(保護者)がお店の準備をしている間に子どもたちは買い物をする準備をします。自分の買い物かごを持ち一箇所に集まります。(写真2参照)
「お買い物をするときに、絵本のみいちゃんはなんと言ったかな?」ぼくが子どもたちに聞きます。思い出した子どもが「ください!」と答えます。「お店に入って買い物をするとき、みんなはなんて言うのかな?」子どもたちはみんな訳がわからないという顔をしています。買い物は小さい頃からコンビニやスパーマーケットというのが当たり前ですから、お店の人に声をかける習慣はありません。大人も子どもも黙ってお店に入り商品を取りレジに持っていきお金を払い買ったら黙ってお店を出ます。お店の人もお客さんにマニュアルの言葉をかけるだけです。そこには会話がありません。子どもたちはお店でものを買うときに「ください」という言葉をかけた経験がありません。そこで子どもたちに説明します。「今日はこれから特別なお店でお買い物をするので、お店で買い物をするときには必ず最初に「ください」とお店の人に声をかけてください。黙って商品を取るのではなく挨拶してください。でもちょっと恥ずかしいから、みんなで「ください」の練習をしましょう。」みんなで一斉に「ください」と声を出します。最初は小さい声ですが2度3度と繰り返すうちにだんだん元気な大声がでてきました。「これだけ大きな声が出れば、お店の人も小さなお客さんに気づいてくれるから大丈夫だね。さあお買い物に出発!」こうして子どもたちは買い物に出かけます。子どもたちは好きなお店で買い物をします。お店の親(保護者)も大きな声で客を呼び込まないと商品を買ってもらうことができません。お金は見えないお金(想像したお金)を使います。お金を払ってお釣りももらいます。お店ではセールが始まったり、おまけをつけたり大きな声でお客さんを呼び込みます。会場はお祭りのように賑やかになります。




「買い物ごっこ」遊びは、コミュニケーション遊び

 15分ほど買い物をすると子どもたちの買い物かごにはたくさんの商品が貼られました。ここで今度は親(保護者)と交代します。子どもたちがお店やさんになり、親(保護者)が買い物かごを持ってお客さんになります。親(保護者)にも一箇所に集まってもらいます。そして子供たちと同じようにお店で買い物をするときになんて声をかけるか聞きました。20代から30代の若い親(保護者)世代は、子どもたちと同じように子どもの時から個人の商店よりもコンビニやスーパーマーケットで買い物をしています。お店の人になんと声をかけるか、言葉が返ってきません。
 ぼくは昭和32年生まれで東京の下町で育ちました。子供の頃は毎日駄菓子屋に行きおこずかいで買い物をしていました。そして、お店に入るときには「くださいなー!」と声をかけて戸を開け店に入りました。黙って入るとお店のおばあさんに叱られました。駄菓子屋での買い物は、大人(店主はおばあさんかおじいさん)と会話を通して社会勉強をする場所でした。ぼくと同じか上の世代の人は、買い物をするときにはお店の人に声をかけていました。その声のかけかたが地域によって違います。各地域で生まれた方言が使われます。「買い物ごっこ」遊びを各地でおこなってきて楽しいのは、その地域によって声かけの言葉が違うことです。鹿児島ではどんな言葉かけをして買い物をするのか楽しみでした。
 最初は子供たちと同じように声かけの言葉が思いつかないようでしたが、一人のお父さんが「若い人は使わないが、おじいさんが [くいやん] とか[くいやんせ] って言う」と教えてくれました。また一人のお母さんが「ください」のイントネーションが東京とは違いKUDASAI の KUの語尾が上がると教えてくれました。普段は気にしないで言葉を使っているので、突然聞かれても気づかないのかも知れません。しかし、どこの地域でもそこで生まれた言葉は必ずあります。今はあまり使わなくなった言葉ですが、今回はこの言葉を使って買い物ごっこ遊びをしていただきました。
 言葉は文化です。今の社会では会話を交わす機会が少なくなって、どんどん言葉が失われています。子どもたちが集まってもスマフォゲームではほとんど会話がありません。「買い物ごっこ」遊びはコミュニケーションを豊かにする遊びです。

よいやんせ

 1時間30分のワークショップはあっという間に終わりました。子どもも大人も大きな声で賑やかな買い物ごっこをして楽しい時間を過ごすことができました。最近はお父さんが積極的に参加されるようになりました。一昔前は見ているだけのお父さんが多かったのですが、今回も声を出して恥ずかしがらずに子どもと遊んでいたので嬉しかったです。
 別府までの帰り道に地元の野菜を買って帰ろうと市場に立ち寄りました。そこの看板には「よいやんせ市」と書いてありました。「よいやんせ」は「よってらっしゃい」と言う意味です。素敵な看板だなと思いました。


 

(*使用している写真はプライベート保護のために一部加工してあります。)