1984年9月に「やさいなおなか」はペーパーバックシリーズの一冊として出版され1990年11月まで重版されていましたが、その後ペーパーバックシリーズの販売は終了しました。そして、1991年1月に「やさいなおなか」は、サイズを変えてハードカバーの単行本として再出版されました。
ところで、このペーパーバックシリーズには、薮内正幸さんの「どうやってねるのかな」や「なにのこどもかな」などもありました。これらの絵本もハードカバーになり今も販売されています。
ペーパーバックシリーズはハードカバーの単行本とは作りが違いました。ハードカバーの単行本は表紙をめくると中扉(二つ目の表紙のような絵とタイトルが描かれています。)がありますが、ペーパーバックの絵本には中扉がありません。表紙をめくるとすぐに次の展開になります。
ハードカバーの絵本になる時に、絵本から外した野菜がありました。その野菜はオクラです。何故オクラがお蔵入りになったのか?その答えは、オクラの形です。
ぼくが「やさいなおなか」を描いていた時は1982年(昭和57年)です。この絵本が生まれたきっかけは、ぼくが高校生の時に描いたキャベツのデザイン画でした。キャベツを真っ二つに切った断面を見て、その形の面白さに感動した事がきっかけとなりました。この時の感動を伝えたくて「やさいなおなか」が生まれました。絵本にするために、いろいろな野菜を買って来ては、真っ二つに切って断面を観察しスケッチをしていました。それらの中で選ばれたものが絵本の作品になりました。その一つにオクラがありました。今から44年前東京下町の八百屋やスーパーマーケットの野菜売り場に並んでいたオクラは、東京ではまだ珍しく家庭料理にも学校給食でも出てくることはない新しい野菜でした。オクラは食べた事は無いけれど、買って来て半分に切ってみると面白い断面が現れました。何個も断面を切りその中から選んで描いたものが、「やさいなおなか」の一つになりました。その時に選ばれたオクラは、今では見かける事がほぼない珍しいオクラでした。オクラにとって運が良いのか悪いのか?ぼくが選んだオクラは六角形の形をしていました。今販売されているオクラは全て断面が五角形です。ぼくが選んだオクラが突然変異のものだったのか、栽培されていく過程で五角形になったのかは謎です?しかし、「やさいなおなか」がハードカバーの単行本になると決まった時には、オクラの断面は五角形に落ち着いていました。ぼくが五角形のオクラを描いていれば、「やさいなおなか」からオクラがなくなる事は無かったのです。やはりオクラにとっては不運としか思えません。
ところで、1982年に作った「やさいのおなか」のラフ1冊目を最近見直したら、描かれているオクラの断面は五角形でした。この手作り絵本を初めて福音館書店に持ち込んで、S編集者(当時は年少版こどものともを担当していて、たまたまぼくが電話した時に受けてくれた編集者)にプレゼンテーションしたところ似た様なサイズの絵本が福音館書店から出ているので、その担当編集者を紹介してもらいました。たまたまその時にそのS編集者(当時は単行本絵本担当)も社内にいたのですぐにお会いする事ができました。そして、作品を見てもらった結果、ぼくの本格的な絵本作りが始まりました。その時は分かりませんでしたが、とんとん拍子に話が進み運が良かったと思います。
さて、「やさいなおなか」からオクラを削ることになり、いろいろな問題がでてきました。一番の問題は、ページ数は決まっているので減った分をどうするか?オクラの代わりをどうするかでした。また緑色の野菜が無くなったことで、色や大きさのバランスを考えて野菜の並べる順番を変える必要が出てきました。そこで絵本を新しく再構成する事になりました。その結果できた見開きのページが、青枠の中に並んでいる野菜の絵です。
青い枠は何を表しているのか?
答えはそら(空・天・宇宙)と地球です。
それでは、なぜ空や宇宙をイメージしたのか?
それは野菜を半分に切るだけで、断面の美しさに気づきたくさんの野菜を観察してスケッチしているうちにどんな野菜も同じ形ではなくどれも不思議な形をしていて、生命の神秘を感じました。宇宙の中で生命が生まれた地球という星で、野菜も同じ様に生まれた奇跡的な形だと思いました。そこで生命の神秘を表現したくて、これらの野菜を宇宙に浮ぶ星に見立てて描くことにしました。野菜の向きがみんな違うのは宇宙に浮んでいるからです。このアイディアが思いついた時は、暗黒の宇宙に浮ぶ輝いている野菜星を天の川の様に描こうとしました。でもこのページだけ背景が黒の宇宙になると神秘的になりすぎるとM編集者にも指摘されて話し合った結果、白地に野菜を浮かべて青枠だけの表現になりました。青枠は青い宇宙(そら)と地球を表現しています。
3つ目の秘密は、絵本を透かして見ると分かります。これはページをめくる絵本の形だからできる仕掛けです。この仕掛けを思いついたのは、「やさいのおなか」は全て手書きで描いていたからです。ある一部分だけコンピュータを使って描いた「やさいのせなか」と「くだものなんだ」には無い仕掛けです。答えは分かりましたか?
答えは、断面に描かれたページを透かして見ると、モノクロとカラーの断面が重なる様になっています。「やさいのせなか」と「くだものなんだ」は重なりません。
これら3つの秘密に気がついた人は、それだけで得した気分になれると思います。ぼくが野菜の美しさに気がついた様に、皆さんも絵本の中で気がついて欲しいと思いました。これは作者の遊び心です。答えを知ってしまったら、誰かに話したくなりますが、そこはできるだけ我慢してください。自分で気がついた方が感動します。今回「やさいのおなか」の初原画展を記念して秘密を打ち明けました。でも他の絵本でも秘密はあるので、気が付いたら嬉しいけどね?「工作図鑑」の秘密は気がついた読者が一人いましたよ。かがくのとも「かえるや」が来年ハードカバーになりますが、この絵本にも秘密やパロディーの仕掛けがあります。気がついたかな?こうやって作者も楽しんでいるんですよ^_^
絵本は文字を読むだけではなく、絵を読む力も必要です。
読者の皆さんも楽しんでくださいね!



















































