絵の勉強をしていた学生時代に出会ったこの本にインスパイアーされて、「やさいのおなか」が誕生しました。
角川文庫 民話集 人は何で生きるか 「二人の老人」トルストイ 米川正夫・訳 昭和48年2月20日 改版11版発行
絵の勉強をしているとき、先生からこんな課題を与えられました。野菜を一つ選んで色彩構成しなさい。ぼくはたまたま台所にあったキャベツを手にとりながめました。まんまるいキャベツはデッサンしやすいように思いました。そして、デッサンしていると葉のすじの形がおもしろく興味がわいてきました。そこで今度は、キャベツを包丁で真二つにわってみました。すると、キャベツの中から巨木が現れました。キャベツの断面は、とてもユニークな形をしていました。目から鱗が落ちる思いでした。今までキャベツはとんかつにそえる野菜としか頭になかったので、キャベツのもっている美しさに気がつきませんでした。毎日見てよく知っていたつもりでしたが、実は何も見えていなかったことに気がつきました。このキャベツ事件の後にトルストイの「二人の老人」を読んだので、この物語は忘れられないものになりました。
大人の答えは、沈黙が多くなります。毎日見てさわって料理して食べているはずなのにわからない。あまりにも身近にある食べ物だけど、知っているようで実はわかっていない。見ているようで見えていないものなのです。
ところが、ある小学生が何の野菜か全て言い当ててしまいました。どうしてわかったのか、その子に聞いたところ、その子は野菜が嫌いでなかなか食べられずながめているうちに、嫌いな野菜の断面を無意識に覚えてしまったらしいのです。なるほど、こういうこともあるわけで、苦笑いしてしまう話です。
美しいもの不思議なものは、意外と身近なところにあるものです。問題は、それにあなたが気がつくかどうかなのです。
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