まず始めに、この絵本が生まれたきっかけについてお話しましょう。
『やさいのせなか』は、ゴーヤーとの出合いがきっかけで生まれた絵本です。初めてゴーヤーという野菜を沖縄で見たときは、その形にびっくりしました。形はサツマイモのように太くキュウリに似ていますが大小様々なイボがあり、とてもおいしそうな野菜には見えませんでした。しかし、好奇心もあり食べてみると苦い味にまたびっくりしましたが、その味は嫌いな味ではありませんでした。その後東京に戻ってからもゴーヤーの味が忘れられず、自分で料理して食べているうちにゴーヤーが大好きになりました。そして、この不思議な形をシンプルに表現する方法がないものか考えました。
ある日、目をつぶって手触りだけで何の野菜かを当てるゲームを、子どもとしていました。ぼくが目をつぶって野菜を触ると、一つ一つ違う大きさのつぶつぶの感触が指や手のひらに点として伝わってきました。すぐにゴーヤーだとわかりました。その時ひらめきました。この野菜の表面だけを写しとってみよう。そして、思いついたのがフロッタージュ(凹凸の表面に紙をあてて、上からクレヨンで擦り凹凸の模様を写し出す技法)という方法です。
実際にやってみると、みごとにゴーヤーの表面が浮き出ておもしろい絵ができました。すぐに他の野菜も試してみました。どれも個性的で思いもよらぬ絵ができあがりました。身近な野菜がこんなに豊かな表情をしているなどとは今まで気がつきませんでした。
モノクロで表現された野菜の表面は、とてもユニークなものもあれば現代アートのように美しいものもあります。野菜のイメージだけにとらわれず、いろいろなものを想像してみてください。あなたの頭の中は堅くなっていませんか? 子供のような柔軟性がありますか?この間イギリス人の大人に「やさいのせなか」を見せたときに、じゃがいものせなかを「せんたくもの」と答えたのには驚きましたが、なるほどと感心しました。
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